季粋の宿 紋屋
 
季粋の宿 紋屋

女将のこだわり・心遣いが感じられる、モダンな和風宿。

2015年6月1日 宿屋の女将のメルマガ 第353号

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     ■       「きもちはいつまでも新米・女将のひとり言」
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■  ■ ■■■■ ■  1999年 日本初・旅館の女将によるメルマガ配信
  ■   ■     開始。経営の悩み、お客様への思い、社員や家族
 ■  ■■■■■   とのかかわり等など。
■ ■ ■   ■   きもちはいつまでも新米であり続けたいと願う、
  ■ ■■■■■   宿の女将のメルマガです。
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  ■ ■■■■■   http://www.monya.co.jp 2015.6.1発行 第353号
                           
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◆ 一日一日を大切に ◆


先日あるお客様がお見えになりました。

チェックインの時は機嫌よく、

[誕生日は書かなくていいの?]とおっしゃるので、

お差し支えなければと促すと、7月1日のお生まれで79歳だそうです。


内心は、まだ少し先だなと思いましたが、お客様の年齢を拝見して、

紋屋にお越しになるのは、今日が初めてで最後なのだろうと思えました。


     せっかくそのようなお申し越しがあったのなら、

     やっぱりお祝いして差し上げようかと社長に相談すると、

     「そうして差し上げたら」とのことでした。



個室風ダイニングでのお食事が進み、

そろそろデザートかなと係に聞いてみると、

今お食事中で、デザートはお部屋入れになったということでした。



お祝いに伺ってみると、最初からご主人様は表情が硬くなり、

そのうち涙ぐみ、感慨にふけっているご様子でした。

奥様も「あなた、また来なくちゃね」とおっしゃっています。



きっと、今まで色々なご苦労があったのだと思います。

ご病気をなさったり、

転勤やらもしくは自営業でお仕事に行き詰まったりと、

そのような事件があったかもしれません。

いろんなことがあったなあと、思い起こされているご様子でした。



長寿の時代といっても、

やはり夫婦して旅行に来られるなんて、もう次はいつかわかりません。

私達の世代でもそうです。

大地震が起きれば、温かいお湯のお風呂にも数ヶ月入れないし、

1滴の水も、数日飲むことが出来ないかもしれません。



毎日当たり前のように、ひねればお水やお湯が出てくる便利な生活は、

決して当たり前ではないのです。

最近は、つくづくそう思い、ありがたく感謝してお風呂を戴いています。




私が入社した年から、毎年ずっとお越しいただいているおなじみ様が、

今まで一度も病院に行ったことがなかったのに、入院中です。


お嬢様によると、水をのむのもやっとという状態で、

しかも、お嬢様の顔もわからない容態だそうです。

普段からかなり痩せていて、大量に飲むアルコールのせいで

いつも手は大きく震えていました。


    「きっと、いまさら病院に行ったら悪いところがたくさん出てきて、

     出られなくなってしまうのでは?」と

     日頃からご心配をなさっていました。



最初のうちは、どのような家族構成なのかも知りませんでしたが、

そのうちにいつも、

お孫さんたちに囲まれたご生活でいらっしゃることがわかりました。


そして、小さいお孫さんを連れてお越しになることがだんだん多くなり、

そのお孫さんたちが大きくなり、

お一人はもうご結婚なさってお子さんもいらっしゃるようになったのです。

まるで親戚のようなお付き合いで、濃いご縁を感じるお客様でした。



病状を知らせるお嬢さまのラインメッセージがいつ来るかと気にしながら、

この時間を過ごしています。なんとか持ち直してほしい。

そう思っておはがきをお送りすると、息子さんが

「素敵なはがき、元気もらったね。俺も頑張るよ」と言ってくれたそうです。




また、あるお馴染み様は、

いつもは息子さんたちとお祖父様をお連れになっていました。

毎回、私や係から、そのおじいさまの故郷である岩手の盛岡の話をするのが

楽しみで、おじいさまを囲んでご家族さまもまた、

私達も接待をしてきました。

4年ほど前は、お祖父様のご兄弟会でお越しになったこともあります。


ところが96歳をすぎて、とうとうおじいさまは、来られなくなりました。

今までお祖父様はご夫婦様の近くにお一人で住んでいらっしゃいましたが、

ご自分たちのマンションに引き取り、

またおじいさまが住んでいたお家を新しく建てなおして、

皆さんでそちらへうつり、お祖父様を介護する毎日となったのです。



前回お越しの時も、奥様は大分お疲れのご様子でしたが、

今日はショートステイにしておいていらしたそうです。

最初は嫌がられたそうですが、ショートステイ先に着いてからは、

どこかのお寺にいらっしゃるように勘違いなさっていたとか。



たまには息を抜かないと、自分自身がストレスの塊になってしまいます。

それでも、本当にお祖父様にお優しく、ご夫婦様だけでなく、

息子さんたちもみんなで温かくお祖父様を支えていました。


そのお祖父様も、とうとう少ししか歩けなくなり、

若い時の話になったり、急に時代が進んだりするそうです。


息子さんたちも、今ではお一人は独立なさり、お一人は転勤が多く

ほとんどご夫婦様だけのご家族構成になっていらっしゃるそうです。



    「二人だけで来たのは初めてなんですよ。」とご主人様。

     お二人だけもいいですね。



こうしたご家族様の内々の話までお知らせいただけることの嬉しさと、

その内容によっては辛さもありますが、

ご一緒に語り合い、考えて言葉を交わして行きたいのです。




     そうした御縁をいただけることが私の喜び。

     この仕事をする意味でもあります。




お客さまにとっても、私達にとっても、残された人生、

なるべく充実して悔いが残らないようにしたいものです。

そしてお客様に対しては、そのお手伝いの一端を私達が担えれば

幸せだと思います。



お迎えするお客さまの今日の一面。

それだけでは全てはわかりませんが、

おなじみ様のように何度もお越しになると、

ご家族様の形も、後ろに控える状況も色々と変わって来ます。



私は、単純に仕事上のその時だけの付き合いで、

うわべだけニコニコしているというのが嫌いです。

できることならそのご家族さまにとって、

楽しかった思い出の1ページが紋屋での出来事であったなら、

なんて素敵なことでしょう!



私は、紋屋に来る前から、前職でもそういう気持ちで働き、

多くの顧客様に囲まれてきました。

これからもそういうお客様方との思い出を胸に、

充実した接客人生を積み上げたい。

もう、残りも少ないでしょうから、尚更のことです。



せっかく戴いた今日という日。

私達はこれからも決してなおざりに成ることなく、

今日のお客さまのお越しを楽しみにお迎えしてまいります。



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e-mailエッセー「きもちはいつまでも新米・女将のひとり言」・隔週日曜発行
 著  者:高尾葉子  okami@monya.co.jp
   発 行 者:高尾憲資  aruji@monya.co.jp
   発 行 所:季粋の宿 紋 屋  otazune@monya.co.jp
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◆素顔の女将◆


   親族や知人の訃報が続いたり、おなじみ様の悲しいお話を聞くと、

   家内は人の命の“秋”を感じるのか、ここのところ朝起きると

   「今日も生きててくれてありがとう!」と私に向かって言う。


   面映いような縁起でもないような、不思議な心持ち.....(^^;)


                           (by aruji)