季粋の宿 紋屋
 
季粋の宿 紋屋

女将のこだわり・心遣いが感じられる、モダンな和風宿。

2013年2月11日 宿屋の女将のメルマガ 第321号

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     ■       「きもちはいつまでも新米・女将のひとり言」
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■  ■ ■■■■ ■  1999年 日本初・旅館の女将によるメルマガ配信
  ■   ■     開始。経営の悩み、お客様への思い、社員や家族
 ■  ■■■■■   とのかかわり等など。
■ ■ ■   ■   きもちはいつまでも新米であり続けたいと願う、
  ■ ■■■■■   宿の女将のメルマガです。
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  ■ ■■■■■   http://www.monya.co.jp 2013.2.11発行 第321号
                           
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◆ 葬儀を終えて ◆


2月1日午後7時22分、私の父が永眠いたしました。


父が亡くなる二日まえに、病院に寄りましたが、

その日が父と会えた最後の日になりました。

もう尿が出なくなってしまい、手足がはれ上がって痛々しい状況です。

声を掛けても聞こえているかも定かではありませんでしたが、

少し離れると私を探すようなそぶりがあり、

胸が張り裂けそうな思いがしました。


「また来るね」とは言えず、


   「ずっと支えてくれてありがとう。お父さんの子でよかったよ。

    本当にずっと頼りにしていたよ。ありがとうね。」


と言って帰ってきました。

聞こえないであろうに、父は自分の命を悟ったのか、涙をこぼしたのです。

88年の生涯でした。



亡くなった日は、とても胸騒ぎがして仕事が全然はかどりませんでした。

姉から危篤の知らせが来て、まもなく亡くなったのです。


私の息子は、会社から最短距離で駆けつけましたが、間に合いませんでした。

もう、病院は玄関が閉まっていましたが、あけてもらえたそうです。


   「やっぱり、もう息をしていなかった。

    ああ、こんなに冷たくなってしまうなんて」とメールが来ました。


いつかは別れが来るとは知ってはいても、

実際にそのときが来ると、とてもとても辛く苦しい日々が続きました。


いまもまだショックは抜けませんが、

仕事があるからなんとか毎日を過ごせています。

どうか皆様もご両親を大切になさってお過ごしください。




私は、最初の結婚では地方に転勤があり、

その後は、子供を抱えて働いていましたし、

再婚後は、また忙しい旅館業で、

今まで親戚関係の冠婚葬祭に全く顔を出していませんでした。


   久しぶりに会う叔父様、叔母様、そして、従兄弟達。

   それぞれに年をとっても、面影は変りません。

   父の弟にあたる叔父様が、父の思い出話をしてくださったことで、

   通夜は、和やかな雰囲気でした。

   私にとっては、今回が、幸か不幸かはじめての葬儀となりました。



お客様の中にも、葬儀屋さんという方がいらして、

その方から、以前に「自分達も接客業だから」と

ちょっとだけお叱りをいただいた事がありました。

係が冷酒を持ってくる時のちょっとした言葉の言い回しに感じたことを

親切心で教えていただいたのです。


また以前、講演の依頼をいただいた団体さんの中にも葬儀屋さんがいらして、

その「死」をいたんでいる人たちばかりではないから、とても難しいという

話を聞いたこともありました。



普通の接客と違って、「ご利用ありがとうございます」とはいえない。

接し方には充分に注意が必要な職業だなと悲しみながらも、

どこかで観察している自分がいました。


今回選んだ葬儀屋さんは、とても適切な対応でした。

設備はJRの線路の下、扉の近くは音がうるさい。

棺を人力で1階に下ろすのが危ない以外は、

不適切な対応は無かったと思います。

必要以上に接することもなく、だからといって冷たいのでもなく、

はじめての葬儀に分からないことだらけの親族に対しても、

親切に指導していただきました。



でも、斎場で棺が焼かれる時は、そのシステムに私は絶句しました。

それは、斎場側の問題と言うか、

こうした職業の方々の間での決まりごとなのかも知れませんが...

もちろん、あのような場面であまり情けをかけられても、

悲しみのあまり狂乱する人も出なくはないでしょう。

極力事務的に事をスピーディに流れ作業で行うのが、

一番問題が発生しなくて済むと思います。



東京のように人口が多い所だからなのかは判りませんが、

平日だというのに、次から次へと霊柩車が到着し、斎場は大混雑でした。



焼き場と焼き場の間が1メートルくらいしか離れていないために、

見たくないものまで見えてしまい、

人間の最期ってこんな風になってしまうのだと、肩を落としました。


そこで働いている方々も、とても大変なお仕事だと思いましたが、

もう少し遺族に配慮が見えたほうが尚良いと思います。

なんだか人生観が変ってしまいそうで、

寝る頃になるといつも思い出してしまうのです。


接客業だからとおっしゃっていた葬儀屋さんも、

どうせ人間が作り出したシステムなので、

そのあたりを「接客業」の観点から改善なさったらいいかと感じました。




親孝行は、ちっともしなかった私。

心配ばかり掛けてきました。

生前は、人間的に決して素晴らしい父だったわけでもないのですが、

やはり、自分の父はこの世に一人きりです。

どうか皆さん、元気なうちに、親孝行しましょう。



ここ、数ヶ月、父がこのような状況だったために、

私はあまり元気とはいえず、周りの従業員達にも心配を掛けました。

人の優しさが身にしみた日々でした。



   生きているうち、元気なうち、一人でも多くの方々に、

   優しい気持ちになっていただけるようなおもてなしをして

   いきたいたいと思います。

   それが、私の生きている証ですから。



昨日は、親孝行の旅と書いてあるお客様が二組もありました。

良い旅となれば良いですね。


湿っぽい話で申し訳ありません。

お読みいただき、ありがとうございました。




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≪次回予定≫

次号は、2013年2月23日に届けする予定です
                 

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e-mailエッセー「きもちはいつまでも新米・女将のひとり言」・隔週日曜発行
 著  者:高尾葉子  okami@monya.co.jp
   発 行 者:高尾憲資  aruji@monya.co.jp
   発 行 所:季粋の宿 紋 屋  otazune@monya.co.jp
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◆素顔の女将◆


葬儀後、落ち込んでぼんやりすることの多い家内だが、

大好きなフィギュアスケートは別らしく、テレビを真剣に見ている。


   特に羽生結弦くんがご贔屓らしく、

   彼が出ると画面に向かって「がんばれよ〜がんばれ〜」と声を掛け、

   ライバルの試技には舌鋒鋭く批評する。


これでアイススケートのかなりの経験者なら傾聴に値するのだが、

全く滑ったことが無いそうで、言うことだけは一人前なんだよねぇ〜(笑)


   「今は単純に観るのではなく、見る目が肥えたのよ」とは家内の弁


                            (by aruji)